おこしやす つらら庵♪
この時期になると、色の少ない景色にひとむら目立つ花がぽつりぽつりと固まって見られる。
彼岸花。
曼珠沙華(まんじゅしゃげ/しゃか)、天蓋花(てんがいばな)、狐の松明(たいまつ)、幽霊花、死人花、、、などとも呼ぶらしい。
ザッとこれらの名前を見ただけでも、これから秋色に染まろうとしている山の緑を、急ぎ足で血に滲ませたような花の怪しさが形容されているように思う。
僕が子供の頃は、どちらかと言うと不吉な花として大人たちに教えられた。
‥花、葉、根に至るまで全てに毒を持つので、なんでもかんでも口にする子供を戒めるために(覚えていないが実際に僕はクーピーペンシルを食べて、色によって味が違うことを当時の級友に誇らしげに語っていたようだ)脅しも加味されてそう言われるのもあるやろけど、とにかく僕が小さい頃は近づいてはいけないくらいに思っていた。
幼い頃から怪しげなものが好きだったので、当然彼岸花も幼少の僕にはとても魅力的に映り、大人たちに見せてやろうと摘んで持ち帰ると、「あらっ!彼岸花摘んできたの!」と、怒るでも無いが数人の大人たちにギョッとされたので、半ばトラウマになっている。
しかし、最近ではその怪しい、怖いというイメージが段々にポジティブなイメージに昇華されているのか、絵描きさんのモチーフとしてもよく取り上げられる。鑑賞者にも人気や。
日本画家というのはとてもへんな生き物で、特に作品にものする予定の無いものでもやたらめったらスケッチをする。
‥写真で取材を済ます現代ではそうでも無いのかもやが。
明治、大正期の日本画家から学ぶ自分も、もちろんなんでも目の前にあるものはとりあえずスケッチをしておく。
彼岸花も例に漏れることはない。
だが、その反面彼岸花ほど絵にならない花もまたと無いと思っている。
花の絵は、脇役たる葉がいい仕事をする事が多い。
そこへゆくと、彼岸花には盛りの時に葉がないんや。
“葉見ず 花見ず”
彼岸花を指す季語にもその性質は語られている。
そして、この花は形が整いすぎてるように思う。
形の良くできた物は絵にしにくい。
一見綺麗な絵にはなるが、突っ込んだ表現が難しいように思うんや。
考えてもみてほしい。
彼岸花を題材とした日本の名画、一つでもあるやろか?
昔の画家たちもスケッチは残しているが、本画は?というと案外あまりない。
そういうことなんです。
なので、彼岸花で一角の作品が描けたら立派だと思う。
彼岸花のスケッチは自分もたくさんしてきたので、いつかは挑戦してみたいが、そんな日がくるんかなぁ、とぐだぐだ思ううちに今年の彼岸花も色褪せてゆきそうだ。
また おこしやす つらら庵♪
◯今日のちぃぴ◯
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